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저녁의 구애

Title/Author/Genre

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    Title: 夕方の求愛

    Author: ピョン・ヘヨン

    Genre: 文学/短編小説集(短編 8編)

     

    LTI Korea staff: 李善行(イ・ソネン)soyi@klti.or.kr / +82-2-6919-7743

Description

  • About the book

    作家の問題意識は傍から見ると、穏やかな日常に潜む不安と不穏、現代人の孤独な内面を深く見つめるいくつもの視線とに現れている。独特な想像力、緻密な構成、そしてほぼ「技芸」の域に達していると評価された、堅実なハードボイルド小説としての完熟した文体がその問題意識に力を添えており「ピョン・ヘヨン小説」のはっきりした色を作り上げている。

     

    表題作「夕方の求愛」は花屋を営む男「キム」が10年ぶりに連絡をしてきた友達の知人の訃報に接する話から始まる。迷いと挫折感、そして義務感に苛まれた「キム」がトラックに葬式用の花輪を乗せて400キロメートルを走り地方都市の葬儀場に行くまで、また葬儀場に到着してからも亡くなった人に会えず会場にも入れないまま恋人との気まずい会話を続けるエピソードが話の大筋だ。長い間生死の境をさまよい続け、弔問客を困らせ、立ち去れずにいる人の不安な息遣いと葬儀場を避けて国道沿いに立つ「キム」の前を駆け抜ける、白いトレーニング服姿をしたマラソン選手の規則的な呼吸が交差する。そして濃い霧の中、うっすらと照らし出される葬儀場の弔燈の光。口笛のような音を立てて走ってきたトラックが横転し、一瞬にして国道沿いに滲む真っ赤な炎が重なり「キム」は不安でどうしようもない夕方を送る。炎を目の前にして「キム」は受話器越しに規則的に聞こえてくる恋人の息遣いに合わせて自分も息を整え突然彼女に愛を告白する。相手はもちろん自分でもわからない言葉を「キム」に言わせ続ける力は、彼が真っ暗な夜の国道沿いに1人で立っていて近くに光を放つ物と言えば葬儀場の看板と燃えるトラックだけという状況なのかもしれない。また頻繁に起こる地震のせいで学生たちが地震発生時に安全に帰宅できるよう作られた地図をお守り代わりに身につけて通う都市だからかもしれない。そのような不確かな災難の脅威の中で、ある人はただ老衰で死にそうだが死なずに持ちこたえている状況に彼が直面したせいかもしれない。取りかえしがつかない言葉が呼び起こした状況と感情をごまかすのに「キム」は今とても困った状況に立たされている。それこそ不安と恐怖ばかりだ。

     

    この他の短編も紹介しよう。既視感を覚える見覚えのある道でナイフの刃のように背筋がぞっとする静寂と暗転が続き染みわたる散策路(「散策」)、驚くほど精密に日常を規格化した図書館内、昨日と今日そしてまだ見ぬ明日までも予測できる空間としてのコピー室とコピー室の職員(「同一な昼食」)、数十年間、寸分の誤差もないように見えた缶詰め工場の現場で隙間なく密封するように音や噂もなく消える人たちと、にも関わらず何事もなく稼働している工場の設備システム(「缶詰め工場」)、派遣期間の間だけ世話を見てすぐ捨てられるウサギの身の上のように、短い派遣勤務のあと人生の方向性を見失い組織に忘れられる事務員(「ウサギの墓」、「ジャングルジム」)、日常から敢えて逸脱して高速道路の真ん中で迷子になり不安と恐怖に吸い込まれる男(「クリーム色のソファーの部屋」)、果てしなく続く高速道路を目的地もなく一定の速度でひたすら前に向けて走るバス、その中に袋詰めされて運ばれる男(「観光バスにお乗りになりますか?」) など「同一性」と「繰り返し」で特徴が消える現代人が経験する無味乾燥した人生の不安と恐怖が8編の作品それぞれに込められている。

     

    この作品集を通して作家は都市の文明に慣れてしまった現代人の隠された不安と孤独、荒廃した内面を見透しながら、便利で安穏な日常が突然鳥肌の立つ不安と暗黒が散らばった世界に、そして終わりのない恐怖に形を変えていく瞬間を執拗なほどに掘り下げていく。作品の中の人物たちは終始一貫して感情を抑えており会話自体はあまりしないが、往々にしてある瞬間に絶望や破局に直面する。音や形なく私たちと共存する不安、予告なしに襲ってくる不幸、簡単に抜け出せない絶望、にも関わらず続く他人の日常が恐ろしくも感じられる人生をピョン・ヘヨンの小説は直視する。ピョン・ヘヨンはこのように、図式化された認識体系を揺るがし日常に現れたおぞましい非現実と不可思議とが押し寄せるタイムトラベルの中に読者を招き入れる。尖鋭化、オートマチック化された都会の日常の中で他人との親密な感情ももちろん存在しなくなり、自分自身との疎通も取れなくなっている昨今、無意識のうちに露わになった私たちの日常を振り返らせてくれる。今まで慣れきってしまって疑いの余地もなかった日常、特に都会での人生をピョン・ヘヨンは彼女ならではのドライで精巧な文体で紡ぎ出している。ピョン・ヘヨンの小説では、固い機械文明と尖端設備やシステムによって人生の偶然や人間の意志、例外や逸脱が嫌われる現代社会を完璧に均質化した「同一性の地獄」として描いている。文明に批判的であろうとしても私たちを取り巻く資本主義の力は際限なく肥大化している。現代文明が成し遂げる衛生施設と尖端のアメニティー施設、そして想像を絶する道楽でそれらしくオブラートに包まれた都市文明こそが私たち人間を非情緒化させ非文明化させ、そして新しい野蛮な世界へと追い込んでいく一番大きな原因であることをピョン・ヘヨンの 『夕方の求愛』は告発している。

     

    About the author

    作家ピョン・ヘヨンは1972年ソウル生まれの短編 「露払い」の当選後、猟奇的で嫌悪感を覚えるハードコアなイメージと想像力を思い切り噴き出させる初の短編集 『あおいガーデン』(2005)を発表し文壇の熱い注目を浴び始めた。この時から「ハードボイルドのドライな文体と現実をひっくり返す想像力で2000年代のディストピア的な時代像を絶妙に描写する」という評価を得た。続いて出版された二作目の小説集『飼育場の方へ』(2007)では 貯水池と湿地から聞こえてくる奇妙な音とそれにより分裂と破壊の一途をたどる人物たちを描いた。暗い人間世界、絶対的な孤独の内面を緻密に掘り下げた長編『灰と赤』(2010)。深く巨大な森の陰湿な空気の中で極度の自己矛盾と自我分裂、瞬間的な激怒と繰り返される自己不信に陥る私たちの内面を描いた長編『西の森に行った』(2012)。発表したすべての作品は大きな話題を呼び、ピョン・ヘヨンは読者と文壇の愛を一身に受け現在では韓国文学の中枢として認められている。

     

    Media Response/Awards Received

    フランスのPhilippe Picquier社から出版された韓国の短編小説集『タクシー運転手の夜想曲、Nocturne d'un chauffeur de taxi)』(ピョン・ヘヨン作家の短編「缶詰め工場」収録)について、「Le Figaro」誌に掲載されたノーベル文学賞の受賞作家ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオの書評: 「今すぐこの本を読んだなら、あなたは残酷で奇妙で予期できない話の才能と真剣さ、ユーモアに驚きの声をあげるだろう。若い作家たちの短編は彼らと同時代の人間、彼らの隣人、すなわち私たち(フランス人)にも切羽詰まった訴えをぶつけるだろう。(中略) しかし、韓国人特有の自嘲によりいつも想像力豊かで暗示的だ。このような韓国小説はあまりにナルシシズムに陥っている最近のフランス作家たちに変化を求めるだろう。韓国小説は私たちの日常の困難を和らげて、現代という音もなく沈みこんだ雰囲気を癒やす解毒剤である」

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